ことのはの理念

「一億総SNS時代」と言われる今のインターネットでは、
ハッシュタグなどを用いた党派的な動員、
そしてオンラインサロンなどによるファンの囲い込みばかりが毎日のように、それこそ刹那的に行われています。

情報の加速度的増大の中で、いつも誰かが感情を爆発させて絶叫している。
そうかと思えば、「この情報を買って頂ければあなたも必ずお金持ちになれる」といった、
嘘か本当か判らない情報商材めいた話が毎日出回っている。
「SNS疲れ」
と言われる現象が起こるのも無理はありません。

現代日本人は、何を指針にして生きていけば良いか、分からなくなっている。

それぞれ新しい価値の宣伝ばかりが喧しいけれど、みんなその価値を振り回して争うばかりで、
誰も価値の基盤となるものを深く考え、議論しようとしない。
悲しいことに、学者たちや知識人たちですらその「炎上」に加担している節がある。

かくして現代は、息の長い知恵を持つことが難しい時代になってしまいました。

––––最早、論壇というものは存在していない。
あるのは、個人と個人が繰り広げる果てしないバッシング闘争と、
新しい生き方だの意識のアップデートだのを振りかざして人を煽る炎上商法だけだ。


そんな現状を憂いた私たちは、3年前に「日本文明」研究フォーラムを立ち上げました。
若手研究者を中心とした小さい規模の団体ながら、人文学や社会科学の最新・最良の成果のうちに、
私たちが大切にすべき価値の基盤を探る試みを続けてきたのです。


そして、昨年より続くコロナ禍の中、社会が未だ上手く動けないでいる令和3年。
この世界史的苦境に当たり、私たちは今まで培ったノウハウを以って、ささやかながらも時流に抗う時が来たと確信しました。


熟考の末、導き出された結論は、
脊髄反射的な反応を止めるために、じっくりと議論を聞いて
明日を生きるための指針を得られる場所をインターネットに作るということでした。



その名も、「ことのは」


その由来は、日本の古語です。皆さんが生き生きとした言葉の魂を得られるような場所にしたいという思いを込めています。


「ことのは」は、自らの言葉を持つ人々の動画を集め、皆さんにお届けするためのオンライン放送局です。
全てが加速度的に転変する現代の情報化社会において、
それぞれに異なる私たちが争い合わずに生きるために、
「文明」=「私たちが共に生きるための共同的な価値の地盤」
の形を常に求めたいと私たちは考えています。

地層の奥底を網の目のように流れる地下水脈は自然に集まれば河川となり、
人が掘り起こせば井戸となり、人々の営みの元になる。
そして、水を分かち合うための知恵は、人々の生活を絶えず繋ぎ直し、人々の心を支える––––
私たちは、皆さんとその原点に還りたい。


そこで、知恵の言葉を分かち合うために、知恵を探求する様々な人に思い思いに語ってもらう場所を用意したいと考えました。

インターネットが最たる文明の利器となった今、それには動画という手段が最適です。
定期購読の月刊誌のように、月額1200円のみを頂きます。
その金額で、そこに全てがあるように、全ての番組を見られるようにいたします。


私たちの共有資源たる思想や文学や歴史や芸術に学び直し、教え合い、背中を押してくれる言葉を一緒に探す
––––そんな「文藝復興」の精神に立つ「動画の総合雑誌」を目指していきます。